結論:元メールをそのまま貼らず、事実と禁止事項を分けて渡す

生成AIでメールを下書きするときは、受信メール全文をそのまま貼り付けるのではなく、個人情報を除き、目的、確定事項、未確定事項、相手へ依頼することを分けて入力します。

AIが得意なのは、与えられた内容の整理や表現の調整です。契約内容を確認したり、まだ決まっていない納期を判断したりする仕事は任せません。

安全に使う基本手順は次の通りです。

  1. 利用するAIサービスのデータ設定を確認する
  2. 氏名や連絡先など不要な情報を伏せる
  3. 確定事項と未確定事項を分ける
  4. 禁止事項を短く指定する
  5. AIには下書きだけ作らせる
  6. 原文と照合してから送信する

個人情報保護委員会は、生成AIへ個人情報を含むプロンプトを入力する場合、利用目的の範囲や、入力データが機械学習へ利用されないことなどを十分確認するよう注意喚起しています。

生成AIへ任せる範囲

メール作成には、事実確認、判断、文章化、送信という別々の工程があります。生成AIへ任せやすいのは文章化の部分です。

工程AIへ任せやすさ理由
長文を短く整理する高い入力内容の要約として確認しやすい
敬語や文体を整える高い原文と比較できる
件名候補を作る高い人が選べる
返品・値引きを判断する低い契約・社内ルールの確認が必要
納期を約束する低い在庫や担当者の承認が必要
宛先を決めて送信する低い誤送信の影響が大きい

「返信を作って」だけでは、AIが不足情報を自然な文章で補ってしまうことがあります。入力にない事実を追加しないよう明示します。

入力前に削除・置換する情報

メールには、本文以外にも署名、引用履歴、添付ファイル名など多くの情報があります。下書きに不要な情報は渡しません。

情報置換例
氏名顧客A、担当者B
会社・学校名取引先、所属先
メールアドレス削除
電話番号・住所削除
注文番号・会員番号末尾だけ残すか削除
未公開の製品名製品X
契約書・診断・成績情報原則入力しない
パスワード・APIキー絶対に入力しない

名前を消しただけで匿名になるとは限りません。会社名、役職、案件名、日時などの組み合わせから本人を推測できる場合があります。

利用サービスの設定を確認する

個人向けAIサービスと、組織向け契約ではデータの扱いが異なる場合があります。たとえばChatGPTには、会話をモデル改善へ使用するかを選ぶデータコントロールがあります。Microsoft 365 Copilot Chatの組織向け保護では、契約に応じたエンタープライズデータ保護が案内されています。

確認する項目は次の通りです。

  • 入力内容がモデル改善へ使われるか
  • 会話履歴を保存・削除できるか
  • 一時チャットなど履歴を残さない機能があるか
  • 組織管理者が設定を統制できるか
  • 接続アプリやファイルへアクセスする範囲
  • 会社・学校の利用ルール

設定名や条件は変更されるため、利用前に各社公式のプライバシー説明を確認してください。

基本の指示テンプレート

あなたはメール文章の編集者です。
以下の情報だけを使い、簡潔で丁寧な返信メールの下書きを作成してください。

目的:
相手との関係:
確定している事実:
未確定で約束できないこと:
相手にお願いすること:
希望する文体:丁寧、簡潔、過剰にへりくだらない

禁止事項:
- 入力にない日付、金額、仕様、理由を補わない
- 未確定事項を確約しない
- 「必ず」「絶対」などの断定を使わない
- 宛名や署名を推測しない

参考にする受信内容:
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個人情報を削除した要点を入力
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最後に「人が確認すべき事実」を箇条書きで示してください。

AIが作った「確認すべき事実」の一覧自体にも漏れがあり得ます。最終確認の代わりにはしません。

用途別テンプレート

日程調整

候補日時:
所要時間:
実施方法:
相手に選んでほしいこと:
まだ確定していないこと:

タイムゾーン、曜日、祝日、会議URLを人が確認します。

問い合わせへの一次返信

受領した質問:
現時点で回答できる内容:
確認中の内容:
次回連絡の目安:
担当部署へ確認が必要な項目:

回答できない内容を推測させず、「確認して連絡する」と明確にします。

お詫びメール

確認できている事実:
相手に生じた影響:
実施済みの対応:
今後の対応:
原因として断定してはいけないこと:

法的責任や補償をAIに判断させません。重大な事故や契約問題は責任者へ確認します。

送信前の照合手順

AIの文章を読んで自然に感じても、そのまま送信しません。元資料と一項目ずつ照合します。

  1. 宛先とCC・BCC
  2. 相手の氏名、会社名、役職
  3. 日付と曜日
  4. 金額、数量、製品名
  5. 回答期限と納期
  6. 添付ファイルの有無
  7. URLとアクセス権限
  8. 未確定事項を約束していないか
  9. 相手の質問へすべて答えたか
  10. 署名と連絡先

特に日付、数字、固有名詞は文章の流暢さとは別に確認します。

注意点:よくある失敗

受信メールを署名ごと貼る

過去の引用履歴には、別の担当者や顧客の情報が含まれることがあります。必要な要点だけを抜き出します。

「いい感じに返信して」と頼む

目的や未確定事項がないため、AIがもっともらしい理由や約束を補う可能性があります。

丁寧にしすぎる

長い前置きや過剰な謝罪で要件が見えにくくなることがあります。「結論を先に」「200字程度」など読み手に合う条件を加えます。

AIが付けた宛名を信用する

AIが文脈から名前や役職を推測する場合があります。宛名はメールソフト側で原文から確認します。

FAQ

Q. 顧客名を伏せれば入力しても安全ですか?

氏名以外の情報から推測できる場合があります。また、利用サービスや組織ルールの条件もあります。下書きに不要な情報は入力しないことを優先してください。

Q. 無料版と有料版ではどちらが安全ですか?

料金だけでは判断できません。個人向けと組織向け、設定、契約条件でデータの扱いが異なります。公式のデータ管理説明を確認します。

Q. AIにメールを自動送信させてもよいですか?

最初は下書きまでに留めます。誤送信、誤った約束、添付漏れを人が止められる状態にしてください。

Q. メール内容を学習させない設定なら個人情報を入力できますか?

それだけで入力が適切になるとは限りません。本人同意、利用目的、会社の規程、保存・アクセス条件などを確認する必要があります。

Q. 毎回同じテンプレートを使えますか?

基本形は再利用できますが、用途ごとに必須項目と禁止事項を変えます。日程調整と謝罪では確認すべき内容が異なります。

まとめ

生成AIでメールを作るときは、個人情報を除き、確定事項と未確定事項を分け、入力にない内容を補わないよう指示します。

AIの役割は文章の下書きです。宛先、日付、金額、契約、添付、回答期限は必ず原資料と照合し、人が送信してください。

引用・参考資料

本文は公開前に出典と手順を確認し、最終更新時点の情報として掲載しています。